研究概要 |
ソフトコンタクトレンズ(SCL)上の涙液は薄く、SCL装着眼では、レンズ表面から涙液の蒸発が亢進して、ドライアイ症状を訴える。また、経験的に、このドライアイ症状は、外部環境の影響を受けることが知られる。そこで、人工気候室を用いて各種の環境条件を作り、SCL上の涙液動態やSCL装用眼の乾燥感の有無を調べ、環境が涙液に与える影響について検討した。検討項目は、1)季節的な温度、湿度の影響、2)温度、湿度の個々の影響、3)SCL厚みと含水率の影響、4)風の影響である。1)季節的な温度、湿度の影響では、環境(1)温度:15℃;湿度:20%、環境(2)25℃;40%、環境(3)35℃;50%の3つの異なる環境と作り、2)温度、湿度の個々の影響では、湿度(水蒸気圧)を一定(9.51mmHg)とし、温度を(1)15、(2)25、(3)35℃と変化させた場合と、温度を一定(25℃)にし、湿度を(4)2.56、(5)9.51、(6)16.46mmHgと変化させた場合を作成した。3)SCLの厚みと含水率の影響の検討では、中心厚みを0.16mmとα0.05mmで、含水率を72.0%と37.5%で、15℃20%の環境下で装着させて検討した。4)風の影響では、25℃40%環境下で扇風機を用いて風速(1)0.0,(2)α5(ビル衛生管理法基準値).(3)1.0.(4)5.5(自転車走行時を想定)m/sの風をSCL装用眼に当てて検討した。評価方法としては、SCL装用時の涙液貯留量をビデオメニスコメトリー法で評価し、SCL上の涙液動態をDR-1^R(興和社製)による涙液の観察およびNon-invasive break up timeの測定によって評価し、乾燥感は問診してた。その結果、季節的な温度、湿度の影響では、低温、低湿の冬環境では、涙液は非薄化、不安定化し、乾燥感の程度が増加することが示された。次に、温度・湿度の個々の影響では、SCL上の涙液は低湿の影響を受けなかったが、低温になると、涙液は菲薄化、不安定化し、乾燥感の程度が増加することが示された。さらに、SCLの厚みと含水率の影響の検討では、SCL上の涙液は、レンズの厚みの影響は受けなかったが、高含水率SCLでは、低含水率より、涙液は菲薄化、不安定化し、乾燥感が増加した。風の影響では、風速の増加に伴って、SCL上の涙液は菲薄化、不安定化し、乾燥感が増加した。
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