研究概要 |
我々が発見した多局所網膜電図(mfERG)のs波について、その発生起源を確定すること,および臨床応用を目指すことを目的に検討を行い、以下の結果を得た。 1.正常眼でのs波記録条件の検討:各年齢層および各屈折度数の正常ボランティアを対象とし,刺激のパターン数,輝度,コントラスト,反転頻度,記録継続時間を変化させてs波を記録し,s波記録の至適条件を確立した。この至適条件によって網膜の多局所から記録されたs波を眼底の鼻側と耳側,あるいは視神経乳頭からの距離によって分け,それぞれのs波の振幅と頂点潜時に違いがあることを明らかにした。 2.臨床症例のmfERGの記録:視神経炎,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障の症例のmfERGを上記の至適条件によって記録し、得られたs波の応答密度と頂点潜時を計測し,各群のs波が異常をきたしていることを明らかにした。眼科一般検査も施行し,視力,視野,中心CFFの結果とmfERGの応答密度および頂点潜時との相関性を検討した。 3.動物眼からの記録:全身麻酔下の成ネコからのmfERG記録の至適体位およぴ至適記録条件を検討した。次いで,硝子体中に神経節細胞機能を選択的に抑制するテトロドトキシン溶液を注入し、その後のs波の消長を観察し,s波と神経節細胞との関連性を検討した。 4.研究の企画,統括と結果の解析,公表:以上の結果を統合して解析することによって,s波の起源は網膜の神経節細胞であることを強く示唆する結果を得た。これらを学会および論文で公表したが,さらに,将来のs波の臨床応用を目指している。
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