研究概要 |
眼内レンズによるモノビジョン法を施行した症例で術後に眼精疲労や近見時の見えにくさ等の不満を訴える例が約20%おり、その要因分析を行った。その結果、満足群と不満足群で左右眼の平均屈折差に有意な差は見られなかった.不満足群の中では設定度数のズレに起因する視力不足,左右眼の大きな視力差が原因と考えられる症例が30%,不同視により両眼視機能が低下し,術後に顕性斜視が出現したり,複視を訴えた症例が13%みられた。さらに不満足群では遠見・近見矯正眼の単眼視力に比べ両眼開放視力が低下し,明らかな両眼加算が得られない症例が多く,近見立体視も不良であった。瞳孔径の個人差や性格的要因も考慮する必要があるが、技術的な精度を除くと、一眼の眼優位性の強さが最も影響している因子であることが判明した。一方、LASIKによるモノビジョン法を施行した症例では術前にソフトコンタクトレンズを用いてモノビジョン体験を行い、十分に適応し違和感のない屈折差を検討した上で手術矯正量を決定したため、全例で術後高い満足度を得ることができた。 自覚的な知覚優位性の定量化の一つの試みとして、45,135度傾斜の矩形波格子図形(中心4度刺激、空間周波数;2cpd)を左右眼に呈示して視野闘争を誘発させ、一方の像のみが排他的に見える優位時間を被験者にはボタンを押させることで記録した。この際、優位眼呈示図形の刺激コントラストのみを20%ずつ段階的に低下させ、非優位眼呈示像の優位時間が優位眼を上回る逆転点を眼優位性の強さとして評価した。優位眼の刺激コントラストが80%・60%で逆転点を示した被験者が最も多かったが、一部の被験者では40%・20%で逆転点を示し、比較的強い眼優位性を有することが判明した。本法は知覚優位性を両眼バランスの観点から定量的に評価でき、臨床への応用が今後期待される。
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