研究概要 |
1)眼内レンズによるモノビジョン法を施行した症例の視機能評価について報告した.術後平均屈折差は2.29Dで,両眼開放視力はほとんどの症例で全ての距離で0.8以上の値を示し,特に0.7mおよび1mの距離では単眼視力より2段階以上の上昇を示した.コントラスト感度は低〜中空間周波数領域のみに面眼加算がみられ、近見立体視で100秒以下の症例は55%であった.アンケートの結果,全体の75%で高い満足度が得られ,術後の眼鏡使用率は17%と低い値を示し,本法が有用な手段であることを明らかにした. 2)モノビジョン法に影響を及ぼす眼優位性に関して,両眼視機能とボケの抑制,運動優位性と知覚優位性の違い,さらに優位眼の機能的差異が大脳半球における空間的注意の非対称性に起因する可能性について最新のトッピックスと自験例を交えて解説した. 3)自覚的な知覚優位性の新たな定量化方法を開発し報告した.直交する矩形波格子(中心2,4,8度刺激、空間周波数;1,2,4cpd)を左右眼に呈示して視野闘争を誘発させ,一眼の像のみが排他的に見える優位時間を,片眼の刺激コントラストのみを20%ステップで段階的に低下させながら計測した、その結果,4cpdの空間周波数で優位眼と非優位眼の差が最も顕著にみられた.さらに非優位眼呈示像の優位時間が優位眼を上回るコントラストを逆転点として知覚優位性の強さを評価したが,強い眼優位性を有する被験者では優位眼コントラストを40%〜20%まで減弱させなければ逆転点を得ることができなかった. 4)脳電位(VEP)を用いて知覚優位性の定量を試みた.視野闘争がよく発現している群では融像図形呈示時の基準電位に比べ電位の増大傾向がみられた.一方,知覚優位性の強い群では電位の減少を示す傾向がみられ,一眼の抑制や眼位動揺を反映していることが推察された.
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