青錐体網膜電図(ERG)を記録するために青色LED内臓のコンタクトレンズ型電極を試作した。この電極を用いて、青錐体ERGの研究が進んでいる正常人眼を対象に種々の記録条件下での波形の変化を解析した。 その結果、十分な白色背景光下であれば青色LEDの刺激強度と刺激時間を調節することにより、青錐体に由来するERGを明瞭に分離することが可能となった。しかしそのdynamic rangeはかなり狭く、また赤・緑錐体の影響を強く受けるために、刺激強度を上げたり、刺激時間を長くすると赤・緑錐体に飲み込まれてしまうことが判明した。刺激頻度を上げて時間周波数特性を調べると、赤・緑錐体は20Hz以上の刺激にも反応を示すのに対し、青錐体はこのような高頻度刺激では分離不可能となり、心理物理学的手法による研究を支持する結果となった。 さらに家兎眼において、臨床疾患に類似した環境を人工的に作成し、一定のコントロールされた環境下における青錐体の変化を電気生理学的および組織学的に解析し、臨床疾患における青錐体の特異的変化の解明を試みるために、小さなサイズの電極を試作し白色家兎を対象に青錐体ERGの記録を行った。その結果、家兎眼でもヒトと同様に青錐体に由来すると思われるERG波形が観察された。しかしノイズが大きく、安定性、再現性の点で今後改良すべき点が多いことが明らかになった。 また臨床症例で、X染色体性網膜分離症と多発性白点消失症候群において青錐体系ERGの検討を行い、興株深い新知見を得、論文に発表した。
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