紫外域・可視光曝露による眼内温度上昇(シミュレーション実験) 水晶体内部または近傍に光が集光する曝露条件(マクスウエル視型照明条件)での眼内の熱の移動を数学的モデルでシミュレートした。その結果、10mWの光が入射した場合でも水晶体の温度は7℃上昇し、光曝露により白内障が発生する可能性を示した。 赤外線曝露と白内障の関連 広域赤外線曝露(700-1400nm)、YAGレーザー(1064nm)、ダイオードレーザー(1480nm)、炭酸ガスレーザー(10600nm)を有色家兎に曝露して障害発生の有無を検討した。その結果、広域赤外線曝露では眼瞼浮腫による瞼裂閉鎖が起こり、水晶体は被曝を免れることにより白内障は発生しなかった。YAGレーザーでは角膜混濁、白内障が誘発された。IRC曝露では曝露開始直後より重篤な角膜傷害を生じたが、水晶体は透明性を維持した。 IRAまたはIRC曝露による眼内温度変化の検討 家兎眼内(前房、水晶体、硝子体、眼窩内)に温度測定プローブを設置後、IRAまたはIRCを曝露して眼内温度の変化を測定した。IRA曝露では眼瞼部の温度は曝露開始直後より、50-65℃まで上昇したが、前房内温度は曝露開始5分後より実験終了時まで39-41℃を示した。硝子体温度は38.6±0.1℃、眼窩内球後38.2±0.1℃、直腸内37.9±0.2であった。一方、IRC曝露では曝露開始前の眼内各部位の温度は、眼窩内球後>硝子体>前房、虹彩後面≧前房、虹彩の前面の順に高かった。曝露開始直後より前房内上方、および下方2測定点の温度は急速に上昇し41-42℃に達した。硝子体の温度は前房より遅れて徐々に上昇したが、40℃を超える例はなかった。眼窩内温度は曝露中でもほとんど変化は見られなかった。 本研究の結論 非電離線曝露により発生する眼障害は眼内での当該波長の吸収による熱によるものであり、非熱作用は考えにくい。
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