視神経乳頭成分を抽出する多局所網膜電図の記録について検査眼の固視をリアルタイムでモニタすることによって、多局所刺激技術の臨床応用の一番の弱点であった、被験者の固視管理を行うことができるようになった。固視を監視しても、必ずしも直接固視の改善ができるわけではないが、実際には固視の悪い記録セグメントを再記録することで記録の質を改善できる。経過を追う際は、モニタ信号を記録管理することで、固視の質の差が結果に反映して誤った評価を行ってしまうリスクが軽減した。固視そのものの改善の他に、固視監視装置と記録台の実装によって、記録の信頼性と、S/Nの改善を得ることができた。被検者は、ヘッドレストによって、それまでの顎台に前屈みになる姿勢に代わって、後ろにもたれ、リラックスして検査を受けることができる。この姿勢は筋性のノイズを軽減するだけでなく、僚眼を被験者自身が手指で抑えることで、知覚トリックによって検査眼の瞬目反射を著明に抑制できる。期間中に150例の症例から多局所網膜電図を記録している。現在の分析方法は既に5年を経過し、技術的には能率化が進んでいるが、古いハードウエアが新しいOSを受け入れず、生体反応の抽出・数値処理の制約となっている。このハードウエアの更新はこれまでも課題であり、今後行うことが望まれる。 論文は基本技術の供覧と、臨床応用によって得られた新しい知見の紹介を行うことができた。
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