多局所視覚入力システムに固規モニタと、固視モニタ画像の同時記録システムを構築し、多局所網膜電図・視覚誘発電位記録中の前眼部像を動画保存することで、症例ごとの記録評価ができるようにした。同時記録システムは、既存の製品を組み合わせたものに過ぎないが、実用的な固視のモニタとして機能し、視神経乳頭成分抽出に必要な記録の信頼性と、S/Nの確保に貢献した。ヘッドレストを備えることによって、被験者はそれまでの顎台に前屈みになる姿勢に代わって、後ろにもたれ、リラックスして検査を受けることができる。この姿勢は筋性のノイズを軽減するだけでなく、僚眼を被験者自身が手指で抑えることで、知覚トリックによって検査眼の瞬目反射を著明に抑制できる。臨床で現実的な、3'38''記録、37刺激エレメントの記録条件で、150例以上症例からの多局所網膜電図を記録した。多局所網膜電図から抽出された視神経乳頭成分が、視神経乳頭萎縮など、網膜神経節細胞の高度の障害例では明瞭な減弱を来すこと、また、片側視束病変では同側の耳側網膜、対側の鼻側網膜の視神経乳頭成分の減弱を来すことを報告した。しかし、静的視野計で検出できる軽度から中程度の視神経障害では現行の視神経乳頭成分では感度が不足し、検出できない症例が目立った。境界が鮮明で、皮質性でない半盲の症例等、現行の視神経乳頭成分で検出しやすい症例の数は多いものではなく、症例の不足が制約になった。視神経乳頭成分の抽出アルゴリズムが参照する、網膜内伝導の所要時間の予測テンプレートの改良の必要性が浮上した。
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