研究概要 |
今年度新たに導入した赤外線電子瞳孔計に,リバース結線型のケーブルを接続して,瞳孔反応をオンラインでパソコンで処理できるシステムを開発した.このシステムを用いて,まず正常有償被験者20名(平均年齢24.1歳)で,光刺激に対する瞳孔反応の9種のパラメータの正常値を求めた.また,同じ正常被験者に赤外線オプトメータを用いて,調節緊張に関する7種,さらに調節弛緩に関する7種のパラメータの正常値を求めた.次いで,ホログラフィック・シースループラウザに投影する1時間の映像プログラムを作製した.この映像プログラムを正常被験者20名の右眼に装用させたシースループラウザに投影し,これを1時間注視させ,映像負荷とした.そして,この負荷前後の正常被験者の両眼それぞれの屈折,瞳孔反応,調節緊張反応および調節弛緩反応を測定した.その結果,右眼の屈折値は負荷前-1.34D+/-1.24Dであり,負荷後の屈折値は-1.66+/-1.28Dで有意の変化(p=0.012)を認め,調節の動特性では単位時間当たりの緊張量で有意の変化を認めた.一方,映像を負荷しなかった左眼では,屈折値には変化は認めなかったものの,やはり調節動特性の1つのパラメータで過緊張状態を示した.しかし,瞳孔反応では全てのパラメータで負荷前後に有意差を認めなかった. 今年度の実験では,ホログラフィック・シースループラウザを用いたウエアラブル・コンピュータの1時間の装用負荷で,負荷直後に軽度ではあるが屈折値および調節緊張反応で有意の変化を認めるものの,瞳孔反応には全く変化を認めなかった.平成15年度は,さらにこの屈折値や調節反応の変化が負荷からどの程度持続するかも検討し,VDT作業やシースルー視作業が眼自律神経系にどのような影響を及ぼしているかを検証する.
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