1.食道の再生 食道全層の再生:ラットの胃壁から機械的および化学的に細胞成分を取り除いたgastric acellular matrix (GAM)を用いて食道の再生実験を行った。F344ラットの胃壁から、細胞成分を除去してGAMを作成する。次にこれを用いて、ラットの腹部食道の一部を切除してpatch状に縫着して置換し、経過を観察した。上皮は早期より再生が見られ、3ヶ月後には、肉眼的にほとんど手術部位の確認ができないほどきれいに上皮が再生していた。筋の再生については、現在検討途中であるが、食道の再生に有用なscaffoldと考えられた。この方法は、実際に臨床に応用する際にも、自己の胃の一部を用いることが可能であり、同種や異種由来のものを使用する際の感染症の問題を気にする必要もなく、倫理的にも問題がない。 2.膀胱の再生 自己細胞を用いた膀胱組織の再生実験を行い、合成高分子のPLGA meshと天然高分子のcollagenを組み合わせた新しいScaffoldを用いて、ブタの膀胱組織を用いて自己細胞からなる膀胱組織をin vitroで構築することに成功した。再構築された膀胱壁コンストラクトは形態学的及び免疫組織学的に検討され、膀胱組織の特徴を維持していることが確認された。この結果を論文にして発表した。 3.幹細胞としての羊膜の利用 妊娠ラットの子宮を切開し、羊膜を分離したのち、ばらばらに分解して、上皮を培養し、羊膜上皮の可塑性について検討している。羊膜上皮は神経系への分化誘導培地にて培養すると、形態が変化し、グリア細胞と思われる形態に変化した。今後は、筋肉や骨などへの変化についても検討してゆく予定である。 4.横隔膜の再生 横隔膜ヘルニアを想定して、横隔膜欠損部における横隔膜の再生実験を行っており、PLGA meshとcollagenからなるScaffoldによるラットの横隔膜の再生を観察している。
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