この研究は当初Biochipを用いて神経芽腫の過剰発現遺伝子同定に関する研究を行う予定であった。しかし、技術的に不可能であったため、cDNA microarrayにより神経芽腫の自然退縮のメカニズムに関与する遺伝子の同定を行うこととした. 小児の代表的な固形腫瘍の1つである神経芽腫(NB)は、1歳未満の症例を中心にしばしば自然退縮を来すことが知られている。しかしその反面、悪生増殖する例もあり、その鑑別は重要であると考えられる。そこで組織学的な違いを利用し自然退縮のメカニズムを解明することを目的に、14例の乳児神経芽腫腫瘍検体を用いた遺伝子発現プロファイルをcDNA microarrayにより行った。結果、組織学的に分化傾向を有するdifferentiated NBと増殖傾向を有するpoorly differentiated NBとの間で発現に差のある遺伝子を同定した。分化傾向のあるdifferentiated NB群においては、分化およびアポトーシスに関連した遺伝子が含まれていた。増殖傾向のあるpoorly differentiatedNB群においては発癌に関連した遺伝子が含まれていた。今後は、さらなる検討を加え、新しい神経芽腫の治療の開発に結びつけていきたいと考える。
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