研究概要 |
神経芽腫の自然退縮機構を理解するために、カスパーゼ9,カスパーゼ3およびカスパーゼ阻害因子であるXIAPの発現様式を検討した。凍結組織20例を用いたウェスタンブロット解析では,全例に前駆型カスパーゼ9がみられ,9例(45%)に活性型たんぱく質(p37/p35)が検出された。前駆型カスパーゼ3も全腫瘍に発現し,13例(65%)に活性型たんぱく質(p24/p17)が認められた。このうち7例(7/13:54%)ではp37/p35が同時にみられ,カスパーゼ9依存性にカスパーゼ3が活性化を受けたと考えられた。XIAPも全腫瘍に存在したが,9例(45%)で発現量の低下を認めた。さらに,このうち6例(6/9:67%)にはp37/p35が検出され,活性型カスパーゼ9を有する神経芽腫では,何らかの機序によりXIAP発現が低下し,より効率的にアポトーシスが発生する可能性が示唆された。ただし,臨床病理学的予後因子とカスパーゼ3活性化との関連は低く,実際の腫瘍退縮には細胞死と細胞成熟が複雑に関与していると示唆された。
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