研究概要 |
【目的】神経芽腫における細胞死の機序を知るために,カスパーゼ3とその基質であるラミンAとPARP [poly(ADP-ribose)polymerase]およびH-Rasの発現状況を検討した.また,組織内のどの細胞集団が死に至りやすいかを知るためにクローン性解析が必要と考え,その予備検討も行った. 【方法】神経芽腫組織(ホルマリン固定パラフイン包埋材料)42例にクエン酸バッファーを用いた抗原賦活化を行った後,抗カスパーゼ3,ラミンA,PARP抗体(前駆型あるいは活性型特異的)および抗H-Ras抗体を用いた免疫染色を行った.また,自食変性部を検出するためにPAS染色を行った. 【結果】前駆型カスパーゼ3,ラミンA,PARPは多くの腫瘍細胞に発現していたが,活性型蛋白はアポトーシス細胞に限局し,予後良好腫瘍に多く発現する傾向がみられた.また,H-Rasも予後良好腫瘍に強く発現したが,その局在と細胞死領域(アポトーシス,壊死あるいは自食変性部)との関連は明らかではなかった. 【考察】神経芽腫における細胞死にはカスパーゼ依存経路が強く関与すると考えられ,最近提唱されたネクローシス様プログラム細胞死によるカスパーゼ非依存経路の関与は確認できなかった.今後,症例を増やしさらに検討を続ける必要がある.なお,線維性異形成,結節性筋膜炎を用いたX染色体連鎖クローン性解析では信頼できる結果が得られており,今後,神経芽腫への応用を行う予定でいる.
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