研究課題
口唇口蓋裂、顎変形症、鰓弓症候群などの先天性形態異常は、その病因として環境要因と遺伝要因が互いに影響しあういわゆる多因子遺伝疾患として捉えられている。近年は遺伝子情報の解析が進歩して、これらの先天性疾患における原因遺伝子の解明が多く行われつつある。われわれ口腔外科領域において扱う疾患としては、裂や形成障害などの症状を有する先天性形態異常が数多く存在する。近年ホメオボックス遺伝子領域が、顎顔面形態異常における疾患関連遺伝子と考えられて注目されている。脊椎動物のホメオボックス遺伝子は、形態形成における時期および部位特異的発現をすることから、形態形成を制御する転写制御因子群をコードする遺伝子群であると考えられている。本研究の目的としては、癒合症状を呈する頭蓋骨早期癒合症、裂症状を呈する口唇口蓋裂、形成障害を呈する第一第二鰓弓症候群のような形態形成異常の発症関連遺伝子に対する体系的な解析を進めている。第一段階では、頭蓋顔面の形態形成に関与すると考えられるホメオボックス遺伝子のうちMSX1、MSX2遺伝子およびDLX2遺伝子に着目し、口唇口蓋裂群・口蓋裂群・健常者群について解析した。MSX1遺伝子の第1エクソンおよびDLX2遺伝子の第1・第2エクソンにおいて遺伝子多型を検出した。この遺伝子多型は口唇口蓋裂群、口蓋裂群、健常者群の各々において出現頻度が異なる傾向にあり疾患発症への関連性が示唆された。今後は同遺伝子領域のさらなる解析と他の疾患関連候補遺伝子の解析を進める予定である。また、疾患発症と関連が示唆された遺伝子型と臨床症状の詳細や顎成長とを比較検討する予定である。