研究概要 |
皮弁における受容体型チロシンキナーゼの発現を、まず皮弁生着に深く関与すると考えられる、表皮角化細胞、動脈血管内皮細胞、皮膚線維芽細胞及び、胎児性線維芽細胞を用いて検討した。胎児性線維芽細胞(Balb-3T3 clone A31)は、これまでの我々の基礎的実験から、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor, LIF)におり細胞制御(増殖性、分化能)されていた事実から、full-length mouse LIF cDNAを永久トラスフェクシヨン塗にて遺伝子導入し、ウェスタン法により継代後のLIFタンパク発現を確認の後、経時的な発現変化とVEGF (Vascular Endothelial Growth Factor)の用量依存性を確認したところ、LIF cDNA遺伝子永久トランスフェクション胎児性線維芽細胞は、VEGF 1,10,100ngと増加するに従い、増殖に強く相関すると思われるリン酸化Erk p42/44 Mitogen-Activated Protein (MAP) kinase発現が添加後1分から30分まで(VEGF 10ng添加時)と1分から60分まで(VEGF 100ng添加時)認められた。LIFはゲッシ類において胎児性幹細胞(Embryonic Stem cell,ES cell)の維持に不可欠である事実から、ヒトにおける間葉系幹細胞とヒト表皮角化細胞、ヒト動脈血管内皮細胞、ヒト成人皮膚線維芽細胞戸の細胞相関と細胞融合(cell fusion)について詳細な検討を加えた。修正Boyden隔壁二重細胞培養法にて、通常はこれら細胞の通過できない径8μmの隔壁膜を用いて、下層に各種細胞、上層にヒト間葉系幹細胞を用いて、16時間培養観察し、膜通過細胞数を各プレート毎に計測したところ、表皮角化細胞は、動脈血管内皮細胞、皮膚線維芽細胞と比較して、有意な幹細胞の通過を認めた(345.0±61.60,36.2±14.45,63.8±24.81,p<0.01)。次いで、単層共培養法にて、間葉系幹細胞と表皮角化細胞を共培養後電顕像を含めて、検討したところ、両細胞の接着と細胞間の恐らく基底膜と考えられるタンパク分泌・接着を認めた。また、臨床で用いられている人工真皮を鋳型テンプレートとして、ヒト間葉系幹細胞を塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor,bFGF)添加で治療すると、創傷治癒促進のみならず、術後42日までのヒト由来表皮角化細胞タンパク(pan-cytokeratin)発現を認めた。細胞の融合詳細な電顕観察で認められなかった事から、ヒト間葉系幹細胞が表皮成分発現細胞へと分化したことが示唆された。更に、同様の創傷治癒実験系でLIF cDNA発現とVEGF用量添加ににより胎児線維芽細胞は治癒部位の表皮成分として重要なcollagen Iタンパク発現と血管内皮細胞マーカーであるCD34発現が確認された事から、Erk p42/44 MAP kinase経路を介した線維芽細胞増殖はゲッシ類で皮膚生着・皮弁延長効果を有する事を示唆し、ヒト細胞ではヒト間葉系幹細胞が同様の機序で皮膚生着・皮弁延長効果を有するものと考えられた。また、LIFの情報系はgP130の中和抗体でラット浅腹壁皮弁生着域制御可能で、経血管的な抗体療法が可能であるが、幹細胞も同様に、結合織膜弁を用いた方法による経血管投与で著明な分化能を異所性骨形成で確認した。
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