これまで筋疾患治療目的で使用される成長因子などは多種類のものが知られているが、中でもInsulin-like growth factor-1 (IGF-1)は骨格筋の発達、維持、再生段階において、重要な役割を持つことが知られている。舌筋は骨格筋と同様横紋筋からなり、外傷や腫瘍摘出により欠損した舌筋は主に移植筋によりその形態と機能の修復がはかられるが、移植筋は最終的には萎縮することが多く、発語、摂食などに支障をきたすことから、その治療方法が望まれている。我々は、骨格筋に対して再生効果を有するとされる、IGF-1遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを作製し、残存舌筋に投与する事により、その舌筋への再生効果について調べる目的で本実験を計画した。現在ラットIGF-1遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターの作製を終了し、3次ウイルスの状態で保存中である。in vitroでの実験で使用するラット骨格筋由来のL6細胞の継代を行っており、これらL6細胞にIGF-1遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを感染させるとmyotubeへの分化が促進され、またmyotubeのhypertrophyも認められた。In vivoモデルであるラット舌筋の切除モデル(ラット舌背隆起から前方1/2を切除、下方は口腔底折り返し部から切除)を作製し、コントロールラットにおける体重の変化、および舌容積の変化に関するデータ採取を完了した。この舌筋切除モデルにおいて、骨格筋の再生初期のマーカーであるBF-45による免疫染色の結果、コントロールラットでの舌筋再生筋線維が同定され、その定量を行った。今後このIGF-1アデノウイルスベクターを用い、ラット舌切除モデルにおいて舌筋の再生効果を検討予定である。
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