研究概要 |
平成14年度の研究により、末梢神経切離後および再縫合後に、支配筋群に生じるdegenaration/regeneration過程における細胞接着分子N-カドヘリンとM-カドヘリンの発現性の経時的変化とその局在につき検索したが、平成15年度は、筋細胞の構築に関与すると言われているR-カドヘリンとNやMカドヘリンの接着分子としての機能発現を制御する3種類のカテニン(α、β、γ)の発現と局在の推移について平成14年度と同モデルを用い、Western blot法及びImmunohistochemical staining法により検索した。R-カドヘリンのレベルと局在は、NやMカドヘリンと異なり、神経切離後徐々に上昇しdegenaration, degenaration/regenerationいずれの過程においてもほぼ同様の推移を示した。カテニンの検索では、α-及びαN-カテニンは、degenaration/regeneration過程において筋周膜に沿って発現し、神経損傷後早期にはその発現レベルの上昇は見られず、6週間目以降に上昇、神経再支配と共に低下する事が判明した。また、β-カテニンに関しては、神経切離後degenarationが進むにつれ徐々にレベルは低下し、筋周膜に沿った蛍光も消失した。degenaration/regeneration過程においては発現レベルに変化は見られないものの、経過中その局在が変化した。すなわち、処置前には筋細胞膜に沿って見られたβ-カテニンは、神経切離後消失し、神経再支配に伴って再び細胞膜に沿って見られるようになった。すなわち、筋の再生や構築に関与すると言われているカドヘリン間においても、さらにαとβ両カテニンにおいてもdegenaration/regeneration過程における動向が全く異なることが判明した。すなわち、これらのカドヘリンやカテニンは神経損傷後の再生過程において、必ずしも互いに結合することによってのみその役割を果たしているわけではなく、それぞれのカドヘリンやカテニンが単独で何らかの役割を担っている可能性が示唆される。特に、発現レベルを変えず、局在を変化させるβ-カテニンの動向は興味深い点である。現在γ-カテニンについても同様に検索中である。
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