Calcium phosphate paste(以下CPP)は術中に成形可能であり、埋め込み後も長期にわたって良好な骨親和性および骨伝導能を有していることが知られている。しかし頭蓋骨の骨欠損部に埋め込んだCPPの中枢神経系に及ぼす影響については知られていない。そこで家兎の頭頂骨に2×1cm大の骨欠損を作成しCPPの埋め込み実験を行った。グループ1(n=5):頭頂骨骨欠損部の硬膜上にペースト状のCPPを充填した。グループ2(n=5):硬膜に10mmの縦切開を加えた後、縫合し硬膜の上にCPPを充填した。グループ3(n=5):骨欠損部とともに硬膜欠損をも作成しCPPを直接大脳上に充填した。またグループ4(n=5)として硬膜欠損のみのコントロール群を作成した。埋め込み前、埋め込み後翌日、1週後、4週後および8週後に末梢血検査および髄腋検査を行った。グループ1、2、4では埋め込み直後に白血球と髄液内の蛋白の軽度上昇を認めるものの埋め込み後4週で正常値に戻っていた。一方、グループ3では直後より上昇した白血球と髄液内の蛋白は埋め込み後4週でも依然としてやや高く、炎症が遷延していたが埋め込み後8週で正常値に戻った。いずれのグループにおいても髄液内の糖や他の測定値に変化はなく、さらに臨床上でも中枢神経障害は認めなかったため、白血球および髄液中の蛋白の変化は無菌性髄膜炎によるものと判断した。頭蓋骨への手術操作によると思われる無菌性髄膜炎症状は一過性に認められたがCPPを埋め込むことによる明らかな中枢神経障害は認められなかった。 以上の実験結果について 第12回日本形成外科学会基礎学術集会(平成15年10月9日〜10日)において演題発表を行った。またPlastic and Reconstructive Surgeryに(投稿中)である。
|