研究概要 |
培養軟骨細胞株HCS-2/8で、CTGFの添加によりNeuregulin-Iのレセプターの一つであるErbB4の発現が上昇したことから、ErbB4とCTGFは関連があることが示唆された。まず,マウス胎児でのerbB4遺伝子発現を検討したところ、erbB4遺伝子は発生の全ステージを通してどこかの組織に発現し、CTGFのような2相性パターンは無かったものの、発生後期における肥大軟骨細胞も含まれていた。次にラットの大腿骨骨折部位で、CTGFとErbB4の遺伝子発現と骨折治癒との関係を検討した。大腿骨を骨折させ、金属プレートで骨伸張させると骨髄から出血し、それに含まれる骨髄間葉系幹細胞によってカルスが形成される。カルスは骨折後7日では種々のステージの軟骨細胞で占められており、その中の肥大軟骨ではctgf発現が検出され、35日目では全ての軟骨は既に骨化していてctgf発現は見られなかった。 一方、erbB4遺伝子はctgf発現よりやや遅れてカルスの肥大軟骨細胞に発現し始め、ctgf発現が終了していた35日目でもなお治癒部位の周囲の間葉系細胞に発現が見られた。このことから、ErbB4発現細胞の出現はCTGF発現細胞より遅く、ErbB4が石灰化のためのレセプターなのかどうかは不明瞭であったものの、同種の細胞にErbB4とCTGFが発現する以上、骨化に関係があることが推測された。この関係は骨伸張しなかった場合でも同様であった。また、ErbB4はErbB2とヘテロダイマーを構成しており、ErbB2により作用が強調されることやErbB2のノックアウトマウスではCTGF発現量が倍化するという報告があることから、ErbB2のノックアウトマウス胎児の大腿骨の肥大軟骨を観察した。ノックアウトマウスでは石灰化部位での肥大軟骨細胞のアポトーシス像が見られなかったものの、石灰化は正常に行われていた。
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