緒言 造血因子のひとつであるコロニー刺激因子1(CSF-1/M-CSF)は破骨細胞の形成過程に必須の役割を演じる。ところが、血管内皮増殖因子(VEGF)がCSF-1と同様の作用を担うことが明らかになった。この発見に基づいて、初年度はVEGF受容体のひとつであるVEGFR-1/flt-1遺伝子のリン酸化部位をノックアウトしたflt-1TK/-マウスにおける骨組織の解析を行なった。さらに、2年目はflt-1TK/-マウスとop/opマウスの配合によるflt-1TKを欠失したop/op(flt-1TK-/-op/op)マウスを作製し、骨組織の解析を行った。 結果 flt-1TK/-マウスでは、正常マウスよりも骨の発達がやや低調であること、破骨細胞数が15%ほど減少していることが示された。骨髄細胞の培養系による破骨細胞誘導実験では、P1GFでは破骨細胞形成がほとんどなく、VEGF121、VEGFEで誘導があった。次に、同マウスとop/opマウスを交配して得られたflt-1TK-/-op/opでは、op/opマウスよりも重篤な大理石骨病を呈していた。生後3週以内の大腿骨では、破骨細胞はほとんど観察されなかった。生後1ヶ月には少数の破骨細胞が観察されたが、その数はop/opマウスより半減していた。flt-1TK-/-op/opにVEGF等を投与して破骨細胞の誘導を行った結果、P1GF以外のVEGFで破骨細胞誘導が観察された。脾細胞を用いたin vitroによる破骨細胞誘導実験では、flt-1TK-/-マウス同様の結果が得られた。 考察 VEGFR-1のリン酸化部位はVEGFによる破骨細胞誘導に必要であることが示された。しかし、VEGF-121、一Eでも破骨細胞が誘導されたことから破骨細胞前駆細胞はVEGFR-1のみならずR-2も発現していることが示唆された。これらのことから、生理的な環境下においてもVEGR-1、R-2を介した破骨細胞形成が骨吸収に寄与していることも十分考えられる。
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