研究概要 |
エナメル蛋白であるアメロゲニンやシースプロテインは,mRNAのスプライシングによって同一の遺伝子から異なる分子型が生じる。特にアメロゲニンでは、少なくとも6種類の分子型が存在する。そこで、本研究ではアメロゲニンに焦点を絞り、アメロゲニンの分子多様性の意義を解明することを目的とした。 実験動物として、スプライシングによって生じるアメログニンmRNAの塩基配列およびその翻訳産物であるアメロゲニン蛋白の分子量、並びにアメロゲニンの分解産物のアミノ酸配列(切断部位)と分子量が分かっているブタを用いた。 特異抗体作成のために、18kDaアメロゲニンに特異的なエクソン2とエクソン5の接合部、6.5kDaアメロゲニンに特異的なエクソン5とエクソン6の接合部、27kDaアメロゲニンに特異的なエクソン4のN端側、さらにエクソン4には含まれているが、スプライシングの結果mRNAには含まれていないと考えられる部分のアミノ酸配列を選んで合成ペプチドを作成し、ウサギに免役して抗体を作成した。これらの抗体でウエスタンブロットを行うと、18kDaアメロゲニンおよび6.5kDaアメロゲニンに対する抗体は、それぞれ目的とするアメロゲニンの分子型とのみ反応することが確認された。また、18kDaアメロゲニンは、25kDaアメロゲニンに比べ、染色される蛋白の分子量が多様であった。しかし、エクソン4に対する抗体はほとんど反応しなかった。これらの抗体を用いて免疫組織化学を行うと、25kDaアメロゲニンに比較して、18kDaおよび6.5kDaアメロゲニンは小柱鞘に局在しやすいこと、18kDaアメロゲニンは分解が遅いこと、6.5kDaアメロゲニンは分解が早いことが示された。これらのことから、アメロゲニンの分子型によって、その局在や分解速度、分解様式に差があることが明らかとなった。
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