研究概要 |
味覚回路と嗅覚回路との脳内神経線維連絡の相互関係を探索することを目的に、本年度はラットを用いて、嗅覚の入口である嗅球に順行性および逆行性トレーサー(WGA-HRP、BDA)を注入した。注入後1〜2日後に灌流固定し、脳の凍結連続切片を作成し、順行性および逆行性標識を暗視野・明視野照明下で観察した。注入は電気泳動法(positive,2μA,4Hz,10min)ないし手動注入法(3%HRP or WGA-HRP,0.1μl)で行った。 標識神経細胞細胞は同側の蓋ヒモ(tenia tecta)付近、嗅結節のカレジャの島(islands of Calleja)、対角帯、外側嗅索核の第2層、中脳レベルの内側縫線核、背側縫線核橋レベルの青斑核に、また反対側では前嗅核にみられた。標識神経線維は嗅球から旧・原皮質の表面の第1層)に通過線維ないし終末部として観察された。主嗅球への注入では原・旧皮質の外側部を、また副嗅球への投射では内側部を中心として投射する傾向が見られた。 しかし、注入部位を、いわゆる嗅覚の入力部位である主嗅球とフェロモンなど生殖との関連性が指摘されているJacobson器官の入力部位である副嗅球に厳密に限局する事は難しく、両嗅球の上記の大脳皮質への出入力(投射)を区分することは困難であった。 来年度は、両嗅球の投射部位の厳密な区分の確定と、主嗅球の主要な投射線維束である外側嗅索の投射部位である外側嗅索核の出入力と味覚の関連部位である視床味覚野(後内側腹側核内側部VPMgu)および島皮質の投射部位である扁桃核との線維連絡的関連性を探索したい。
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