研究概要 |
歯周疾患をはじめとする口腔感染症において粘膜免疫系は重要な宿主防御機構として働くことが予想されるが,老化にともなう変動については依然不明な点が数多く残されている.そこで本研究では,粘膜免疫系で中心的役割を果たすB細胞を対象に,成人性歯周炎の原因菌であるProphyromonas gingivalisのLPS(Pg-LPS)に対する機能的受容体およぴ反応性の老化にともなう変動について検討する.本年度は,まず老化(SAM)マウスの脾臓B細胞を用いて,Pg-LPSによるマイトジェン活性および多クローン性B細胞活性化反応について検討した.その結果,老化徴候を示すSAM-PマウスB細胞および対照のSAM-RマウスB細胞とも,培養2日目にマイトジェン活性の反応性のピークが認められた.しかし,SAM-PマウスB細胞の反応性はSAM-RマウスB細胞と比較して有意に低いことが明らかとなった.一方,Pg-LPS刺激後の抗ヒツジ赤血球抗体産生細胞数から測定した多クローン性B細胞活性化反応も,マイトジェン活性同様,SAM-PマウスB細胞でその反応性が有意に低下していた.しかし,SAM-Pマウスでマイトジェン活性の低下が現れる月齢と多クローン性B細胞活性化反応の低下が現れる月齢が若干異なることが認められた.そこで次年度には,これらの成績をもとに,研究実施計画通り,B細胞上のPg-LPSに対する機能的受容体であるCD14およびToll-like receptorsの発現状況についてmRNAレベルでの解析を行い,B細胞の細胞レベルでの老化にともなう変化について明らかにするとともに,機能面での特異性との関連性についても検討を加える予定である.
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