研究課題/領域番号 |
14571745
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
天野 修 明海大学, 歯学部, 教授 (60193025)
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研究分担者 |
杉山 完司 明海大学, 歯学部, 助手 (10171183)
藤井 博子 明海大学, 歯学部, 助手 (30049431)
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キーワード | 熱ショック蛋白 / メッケル軟骨 / 免疫組織化学 / in situ hybridization / 器官培養法 / アンチセンス法 / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
熱ショック蛋白質(Hsp)は、熱や重金属、エタノールなどのストレス刺激によって誘導される蛋白質である。その中でもHsp25は発生過程における細胞の増殖、分化、細胞死の調節に関わるスイッチの役割を果たすと考えられている。メッケル軟骨は第一鰓弓に発生し、直接下顎骨形成には関与せず、前方部は出生時までに変性・消失する。中間部は蝶下顎靱帯に、後方部はツチ・キヌタ骨になる。その変性・消失の分子機構は不明である。本研究ではメッケル軟骨の発生および消失に関する機構の特異性を調べる目的で、各発生段階のマウス胎仔メッケル軟骨におけるHsp25の発現と局在を免疫および遺伝子組織化学的に調べ、他の胎生期および生後の軟骨と比較した。さらにHsp25アンチセンスODNを投与した器官培養法を用いて下顎を培養し、アルシアンブルー軟骨染色を施した全載標本とHE染色連続切片を作成し、Hsp25の発現抑制の影響を組織学的に調べた。 胎生期の椎骨や長幹骨原基軟骨、生後の脛骨骨端板軟骨や喉頭・気管軟骨の肥大軟骨細胞にHsp25免疫活性を認め、増殖期を含む他の軟骨細胞では陰性だった。膝関節関節軟骨ではHsp25免疫陰性だった。メッケル軟骨ではE12に間葉凝集が始まるが、軟骨形成間葉細胞がHsp25免疫陽性を示した。E13では軟骨細胞の細胞質に免疫活性が局在した。E14ではほとんどの軟骨細胞が免疫陽性を示したが、後方部では陽性を示す軟骨細胞は少なかった。in situ hybridization法では、メッケル軟骨の軟骨細胞はHsp25のmRNAの局在が認められた。E16では前方部の切歯歯胚領域に軟骨の変性が始まり、Hsp25免疫活性はほとんどの軟骨細胞から消失した。胎生期では下顎骨の骨芽細胞にはHsp25免疫活性は認められなかった。アンチセンスONDs投与のアルシアンブルー軟骨染色全載標本では、前方・中間部が欠損したメッケル軟骨が観察された。HE染色連続切片では、下顎骨発生には影響が認められなかったが、前方・中間部のメッケル軟骨が認められなかった。 以上の結果から、メッケル軟骨においてHsp25は前方・中間部の発生・成長に必須であり、免疫活性の消失と変性時期がほぼ一致することから、変性・消失を調節する役割を担っていると考えられた。
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