当該研究では、軟骨細胞の機能的な分化と病態のメカニズムについて、生体細胞ならびに培養軟骨肉腫細胞を用いて組織細胞化学的、分子生物学的な解析を行なってきた。この中で、生体における軟骨細胞の増殖能や基質合成能は成長ホルモンやエストロゲンなど各種のホルモンによって制御されていることを明らかにした。これらの知見は、既に学術論文として発表した(明海大学歯学雑誌30、63〜78、2001)。現在は、発育・増殖能の高い生体移植性軟骨肉腫細胞や、転移能を有する舌癌由来の細胞株を用いて、細胞活性と細胞周囲基質の微少環境の変化との関連を中心に、分子生物学的な解析を行なっている。すなわち、細胞代謝回転の早い軟骨肉腫細胞や、組織浸潤性の高い舌癌細胞では、これらの細胞が産生する膜型のマトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)の活性が、EGFなどのサイトカインによって制御されている可能性を示唆した知見を得ている。この結果の一部は、平成15年4月に開催される第92回日本病理学会総会にて発表予定である。今後は、培養ヒト関節軟骨細胞を使用して、軟骨細胞の発育・成長と、細胞周囲基質の微少環境との関係について分子生物学的な研究を続行していきたい。
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