研究概要 |
プラークバイオフィルム形成に影響を及ぼす齲蝕細菌(Streptococcus mutans)の表層蛋白質を解析し、次の成果を得た。S.mutans 109cのSortase遺伝子(srtA)をPCRおよびInverse PCRで増幅後、ベクターにクローニングし、その全塩基配列を決定した。つぎに、その配列をもとに挿入不活化によりS.mutans 109cのsrtA欠損変異株を作成した。特異抗体を用いたウェスタンブロット解析は、SortaseがS.mutansの表層蛋白質(PAc : surface protein antigen),グルカン結合蛋白質(GbpC : glucan-binding protein),デキストラナーゼ(Dex : dextranase)の細胞壁への結合を触媒していることを証明した。次に、S.mutansの野生株(109c株)とsrtA欠損変異株のプラークバイオフィルム形成能を調べ比較した。その結果、srtA欠損変異株はデキストラン存在下でのグルカン依存性凝集能を消失し、さらに非水溶性粘着性グルカン合成能をも失っていた。これらの結果から、SortaseがS.mutansのPAc, GbpC, Dexの少なくとも3つの表層蛋白質の膜局在性を支配すると共に、それらの生理機能(齲蝕誘発性バイオフルム形成能)をも支配していることを示唆した。この現象はsrtA遺伝子の不活化のみならずSortase酵素の阻害でも期待できることから、Sortaseはプラークバイオフルム形成と齲蝕の予防の新たな標的として魅力的な酵素であることが示唆された。
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