研究概要 |
前年度は、プロレニンの第2の切断箇所、Arg63-Ser64をまたぐ短ペプチド(ST-161:Thr-Lys-Arg-Ser-Ser-Leu-Thr-Asp-Leu-Ile-Cys)の合成、抗体の作成に成功した。今年度はそのペプチドの細胞内局在を精査すると共に、他の切断箇所についても改めてその領域をデザインし抗体の作成を試み、次の成果を得た。 1)免疫染色の結果、ST-161が局在するオルガネラはゴルジ装置、未熟な分泌顆粒を含むトランスゴルジネットワーク(TGN)に相当する領域、顆粒性導管細胞の核周部であることが明かとなった。すなわち、これらコンパートメントでArg63-Ser64の切断が行われるため、成熟分泌顆粒にはプロセスされたレニンフラグメントや活性型レニンが含まれ、切断部位をまたぐような領域をもつプロレニンは存在せず、プロレニンがArg63-Ser64でプロセスされるのはこれらのコンパートメントであることを強く示唆している。 2)ST-161が局在する位置を免疫電顕で検討し、局在するコンパートメントを正確に同定しなくてはならない。電顕では,凍結超薄切片法の改良と標識金コロイド法により精査している。しかし、現在のところ良好な結果を得ていない.また、ゴルジ装置やTGNを認識する抗体を用いて、ST-161との二重染色を検討しているが、同様に良好な結果を得ていない. 3)抗体そのものの特異性、すなわち、ST-161抗体がプロレニンのみを認識するのか、あるいは、フラグメントも認識してしまうのかをWestern Blotting法で検討しなければならない。しかし、GCT細胞にはプロセシング酵素が大量に含まれ、Blotting中にこの酵素によってプロ型が活性型にプロセスされ、ホモジェネート中のプロ型が維持できない。このため抗体の特異性については、プロセシング酵素の阻害等を試み、現在、模索の段階である。 4)プロレニンの細胞内プロセシングの起始と終止部位を特定するためには第1、第2の切断箇所についても再検討する必要があるが、まだ抗体は得られない。
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