研究概要 |
平成15年度は,舌下腺のほか顎下腺においても加齢に伴う組織構造の経時的変化と電顕を用いた微細構造学的な観察を中心に進めました。観察に供するラットの個体数も増やし、生後8ヶ月から2年5ヶ月にわたる腺重量変化についても、さらなる検討を行いました。今回、ラットの体重100gあたりの腺重量を算出したところ、舌下腺では生後1年8ヶ月で最も重い17.5mgを示し、その後は減少の一途をたどり、生後2年5ヶ月では8.9mgにまで減少していました。また、顎下腺の腺重量は生後1年9ヶ月で100.5mgと最も重く、2年5ケ月では36.4mgまで減少していました。これは小葉間結合組織や腺房細胞基底膜周囲で、コンゴーレッド染色によりアミロイド沈着が認められた時期とも重なることから、いずれも成長発育に伴い腺組織が順調に発育するも、生後1年8ヶ月ないし9ヶ月を過ぎる頃から腺組織の萎縮が訪れることを示唆しているものと思われます。 電顕観察においては、舌下腺の分泌顆粒に含まれるタンパク質の存在を証明するために、プロナーゼ消化法を行いました。その結果、胎生18日で出現した均一で電子密度の高い顆粒とまだら様の顆粒の2種類の顆粒は、比較的よく消化されましたが、生後28日を過ぎた頃から消化状態に変化が生じ、生後2年5ヶ月になると、この半月部分に認められたこれらの顆粒は,だんだん消化されにくくなりました。このことは、発育に伴う分泌顆粒の形態的な変化に加えて、顆粒内で性状変化が生じ、タンパク質以外の物質が添加されたためと考えられます。 次年度は,最終年度にあたるため,今までに得られた結果と電顕観察による微細構造学的な精査をさらに行い,最終的な総括を行う予定であります。 なお、この内容の一部は、2003年6月にスエーデンイエテボリ市で開催された第81回国際歯科学会にて発表を行いました。
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