研究概要 |
Prevotella属は嫌気性グラム陰性桿菌で,種々の歯周疾患患者の縁下プラークより分離され,歯周疾患の発症、進行に関与すると考えられている。しかし、口腔内の歯周病原性をもつ細菌の中で最も分離頻度の高い細菌であるにも関わらず,Porphyromonas属ほど病原因子の解析が進んでいない。また、Prevotella属の分離頻度を調べてみると,健常小児の歯肉溝ではP.intermediaよりP.nigrescensが優勢でであり(Okamoto et al. Oral Microbiol. Immunol.)2001,歯周疾患の歯周ポケットは健常者の歯肉溝と比較しP.nigrescensの分離頻度,菌数は同程度であるのに反し,P.intermediaの分離頻度,菌数が増加し,両菌種は異なる分布性状を示す(Maeda et al. Microbiol. lmmunol. 1998)。 平成14年度は、1.Prevotella属のアルカリホスファターゼ遺伝子の検討。2.Prevotella属の血球凝集因子の検討、を研究実施計画とした。その結果、P.intermedia、P.nigrescensおよび新しい菌種として発表されたP.pallensの3菌種のアルカリホスファターゼがポリアクリルアミド電気泳動で異なる泳動パターンを示し、各々異なるアルカリホスファターゼを示すことが判明した。また、Prevotella属のホスファターゼはPorphyromonasとは異なり、チロシンホスファターゼを特異的に阻害剤するorthovanadateで阻害され、50%阻害濃度が0.05μMであった。さらに、in vitroの実験で緑茶成分のカテキン類がチロシンホスファターゼを阻害することが明らかとなり、Oral Microbiol. Immunol.に発表した(in press)。Prevotella属は菌体外にも強いホスファターゼを出し、病原因子の一つと考えられ、歯周病の予防に緑茶成分が有効であることが推測された。今後さらに、Prevotella属のホスファターゼの生理的役割を調べたい。 既に発表されているP.intermediaの酸性ホスファターゼ遺伝子配列を基に、P.nigrescensの酸性ホスファターゼの遺伝子解析をinverse PCR, gene walkingの手法を用いて検討したが、良好な結果は得られなかった。これは目的遺伝子の近隣に適当な制限酵素切断部位がないためか、全く異なる遺伝子を持つためと考えられる。 現在、細菌の染色体DNAを制限酵素で切断し、ショットガン方式で大腸菌に組み込み、発現クローンを検索中である。 血球凝集因子については、Leung-KP, Lee SWらと共同で、P.intermediaの血球凝集因子(phg遺伝子)を単離した。大腸菌は凝集活性の少ないJM109株を用いて、組換体を作成した。現在さらにphg遺伝子産物の明確な凝集活性を追試験中である。
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