血管内皮は口腔内における細菌感染時に、いわゆる炎症性サイトカイン、ケモカインを産生し、局所生体防御を能動的に調節すると考えられる。本研究では常在菌叢と粘膜免疫系の関係を、germ-free-Conventionalized ratを用いて、パイエル板リンパ濾胞上皮において検討した。結果、germ-free環境下では上皮内にはT細胞、B細胞は誘導されず、樹状細胞を主体とする未熟抗原提示細胞(CD80/86^-)が生後5ヶ月を経ても存在することが明らかとなった。この細胞集団は常在菌叢が形成されると1〜4週のうちに見られなくなり、菌叢確立後はB細胞が抗原提示細胞としてこれに加わる可能性が示唆された(J.Immunol.170:816-822.2003)。歯周病原細菌の一つであるPrevotella nigrescensの産生するexopolysacciharide(EPS)が白血球抵抗因子として働き、膿瘍形成に重要な役割を果たしていることから、EPS刺激時の培養ヒト単球、ヒト臍帯静脈内皮細胞の炎症性サイトカイン、ケモカイン産生をしらべたところ、EPSはこれら因子をほとんど誘導しないことが明かとなった。LPS刺激前の培養細胞にEPSを加えて前培養すると、LPS刺激に対する反応は減弱された。このEPSの構造をメチル化分析により推定した結果、P.nigrescensのEPSはマンノースを主鎖とし、1-3、1-6結合による側鎖を多く持つことが明らかとなった(論文投稿中)。おそらくP.nigrescensはEPSを主体とするバイオフィルムを形成し、細胞周囲に物理的バリアを形成することにより、免疫細胞、血管内皮細胞に対するLPS刺激を遮断すると考えられる。
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