昨年度は初年度に引き続き、温度刺激強度変化弁別課題をトレーニングしたサルの大脳皮質第一次体性感覚野からニューロン活動記録を行った。大脳皮質第一次体性感覚野(SI)から検出される温度受容ニューロンは顔面皮膚のキャプサイシン処理により、未処理動物に比べより高い反応を示した。また、この活動性の増強は温度刺激強度変化弁別速度と強い相関を示した。しかし、ベース温度である、T1刺激温度が46℃と侵害レベルに達すると、ニューロン活動と弁別速度とは有意の相関を示さなくなり、弁別速度が非常に速くなったのにもかかわらず、皮質ニューロン活動の増加は顕著でなかった。また、本年度は熱刺激だけでなく、冷刺激弁別課題を用いてサルを訓練し、SIからニューロン活動を記録し、弁別速度とニューロン活動との相関についても検索を行った。冷刺激に反応を示すニューロンは現在までに数個しか記録されていないが、記録されたもののほとんどは、冷刺激弁別課題試行中に活動性を減弱した抑制性ニューロンに分類された。また、このニューロンの中には光刺激、あるいは熱刺激に対しても活動性を減弱するものが認められた。以上の結果から、大脳皮質第一次体性感覚野に分布する温度受容性ニューロンは、刺激のモダリテイーを忠実に他の皮質領域に伝え、刺激が加えられた場所や刺激の強さの弁別に重要な働きを有するものと、モダリテイーに関係なく刺激が加えられという現象がニューロン活動の変調を誘導し、刺激のオンセットとオフセットの情報処理に関係した役割を担うものに分類された。今後は、これら2つのタイプのニューロンが、キャプサイシン処理によって過敏化した状態で、どのような変調を受けるかを解明していく予定である。
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