カルデクリンは膵臓より精製クローニングした血清カルシウム降下因子であり、急性膵炎の惹起因子と考えられる。本因子はプロテアーゼ活性を持つが、血清カルシウム降下活性はプロテアーゼ活性と無関係であることを明らかにしている。また、本因子の血清カルシウム降下作用は成熟破骨細胞による骨吸収の抑制活性によることを明らかにしている。 そこで、マウス骨髄細胞からの破骨細胞誘導系を用いてRANKLによる破骨細胞誘導に対するカルデクリンの抑制効果を検討すると、カルデクリンは濃度依存的に破骨細胞の誘導を抑制した。このことは、カルデクリンは成熟破骨細胞の活性抑制のみならず破骨細胞誘導においても抑制効果があることを示し、長期間の骨代謝異常症である骨粗鬆症の治療に適用できることを示している。 そこで、卵巣摘出骨粗鬆症モデルマウスを用いてカルデクリンの腹腔内連日投与における骨粗鬆症治療を行なった。その結果、カルデクリンは血清カルシウムの低下とともに骨吸収のマーカーである血清コラーゲンペプチドを低下させた。このことから、カルデクリンの腹腔内連日投与により卵巣摘出による骨吸収促進を抑制したことを明らかにした。 さらに、カルデクリン遺伝子を卵巣摘出マウスの筋肉細胞内で2週間発現させた。カルデクリン遺伝子は投与後2週間にわたり発現が維持されていたが、血清カルシウムは低下の傾向は見られるものの有意な低下はなかった。組織学的検索では、卵巣摘出群の大腿骨の骨稜構造は正常対照群に比べ著しい減少が見られたが、卵巣摘出カルデクリン遺伝子発現群では骨稜構造が回復する傾向が見られた。以上の結果は、骨粗鬆症をカルデクリンの遺伝子治療で行なえる可能性を示唆した。
|