研究概要 |
筆者らは,サイクリックAMP(cAMP)が分泌小胞膜モノアミン輸送およびテトラヒドロビオプテリン(BH4:一酸化室素合成酵素の補酵素)の膜輸送を調節することを発見しその機構を研究してきた.その過程で,サイクリックGMP cGMPがcAMPとは逆に分泌小胞膜モノアミン輸送を促進すること,またBH4膜輸送に対してはcAMPよりも強力に抑制することを見いだした.このcGMPによるモノアミンとBH4膜輸送調節の作用機構について研究を開始した. 1.cGMPの分泌小胞膜モノアミン輸送促進.ジギトニンによって原形質膜を可透過性にした褐色細胞腫細胞PC12を用いて,分泌小胞膜アミン輸送を検討した.cGMPによる膜輸送促進は濃度依存的である.プロテインキナーゼ阻害剤は単独で用いると膜輸送を促進させるが,cGMPと併用しても有意な変化は検出されない.また分泌小胞モノアミン輸送担体(VMAT)のリン酸化はcGMPによって検出されず,cGMPの作用はVMAT分子の直接のリン酸化によるものではなく,VMAT活性を調節するような蛋白質を介して起きると考えられる。このような調節蛋白質を検索している. 2.cGMPのBH4膜輸送抑制.BH4の原形質膜輸送過程について検討した結果,細胞外から細胞内への内向輸送と,細胞内から細胞外への外向輸送は全く異なる機構で行われることを明らかにした.cGMPはBH4外向輸送を抑制するが,内向輸送には影響を及ぼさなかった.またビオプテリンには,ジヒドロ型,酸化型などBH4以外に酸化還元状態の異なる型があるが,cGMPによる外向輸送抑制はBH4に特異的に観察される.一方,BH4内向輸送で取り込まれたBH4は,細胞内で生合成されたBH4とは異なる経路で速やかに酸化され,細胞外に排泄される.
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