研究概要 |
サイクリックAMP(cAMP)が分泌小胞腹モノアミン輸送およびテトラヒドロビオプテリン(BH4:一酸化窒素合成酵素の補酵素)の膜輸送を調節すること,またサイクリックGMP(cGMP)がcAMPとは逆に分泌小胞膜モノアミン輸送を促進すること,さらにBH4膜輸送に対してはcAMPよりも強力に抑制することを見いだし,このcGMPによるモノアミンとBH4膜輸送調節の作用機構について研究を行ってきた. 1.cGMPのBH4膜輸送抑制:細胞外から細胞内へのBH4内向輸送と,細胞内から細胞外へのBH4外向輸送は全く異なる機構で行われる.また,BH4外向輸送でも,細胞が自ら生合成した内在性BH4の外向輸送(漏出)と,外来的に取り込ませたBH4の外向輸送(排泄)では機構が異なることをつきとめた.(1)内在性BH4の漏出はcGMPで抑制,低張条件下で促進され,また水チャンネル(aquaporin, AQP)の阻害剤で抑制された.このことから,細胞の浸透圧,体積が内在性BH4漏出に関係しており,さらに細胞の浸透圧調節や水輸送に重要な働きをするNaK-ATPaseやK+,Cl-イオン輸送担体の機能調節もBH4外向輸送に関わりを持つことが示唆された. (2)BH4内向輸送で外液から取り込まれた外来性BH4は,内在性BH4とは異なる細胞内部位に導かれ速やかに酸化され,細胞外に排泄される.この外向輸送(排泄)は毒物排泄蛋白質ファミリーに属する蛋白質が関与していることを示唆する結果が得られている. 2.cGMPの分泌小胞膜モノアミン輸送促進:cGMPによる分泌小胞モノアミン輸送担体(VMAT)のリン酸化は検出されなかった.cAMPやcGMPのVMATに対する作用は間接的で,VMAT活性を調節するような蛋白質を介して起きると考えられる.このような調節蛋白質について引き続き検索している.
|