研究概要 |
ラット耳下腺から得た遊離細胞を放射性無機リンで標識後,βアドレナリン受容体を刺激すると,Na^+,K^+,2Cl^-の共輸送活性およびブメタナイドの結合量を調節するN-末端部分のリン酸化が同時に促進されることを報告してきた(Am. J. Physiol.(Cell Physiol.)277:C1184-C1193,1999)。このリン酸化はこれまでPKAによって直接リン酸化されると考えられてきたが,in vitroの系でNa^+-K^+-2Cl^-cotransporにPKAを直接作用させると,N-末端部分のリン酸化は全く認められず,Na^+,K^+,2Cl^-の共輸送活性およびブメタナイドの結合量も全く変化しなかった。したがって,PKAによって直接リン酸化されるリン酸化部分は機能に関与しないことが示唆された。一方,遊離細胞をジギトニンでパーメアビライズした遊離細胞にcAMPを添加し,受容体を介さず直接PKAを活性化すると,機能調節に関与するN-末端のリン酸化が認められた。したがって,Na^+-K^+-2Cl^-cotransporterterの機能調節に関与するリン酸化部位はPKAによって活性化されるPKA依存性のリン酸化カスケードによってリン酸化されることを明らかにでき,今年度Am. J. Physiol.(Cell Physiol.)282:C817-C823,2002を報告できた。遊離細胞をジギトニンでパーメアビライズした実験系に,機能調節に関与するリン酸化部位を予想し,そのアミノ酸配列を含む種々の合成ペプチドを添加し,競合的にリン酸化を阻害した結果,Thr184-202を含む合成ペプチドによってN-末端のリン酸化が抑制される傾向を得た。以上より,これらのThrのいずれかが機能調節に関与するリン酸化部位と考えられる。さらに詳細な検討を続けたい。
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