研究概要 |
ラット耳下腺のNa^+-K^+-2Cl^-共輸送体の機能を調節するリン酸化部位はPKAによって活性化されるカスケードによってリン酸化されることを報告してきた(Am.J.Physiol.,2002)。今年度,機能を調節するリン酸化部位のアミノ酸配列を含む種々の合成ペプチドによって競合的にリン酸化を阻害した結果等を含め,日本唾液腺学会誌(2003)の総説をまとめることができた。一方,共輸送体をリン酸化するカスケードを活性化するPKAはアンカリングプロテインによって膜に固定されている可能性が考えられる。このアンカリングプロテインとPKAの複合体を詳細に調べた。耳下腺の基底側膜にcAMPを添加すると,膜由来のA-キナーゼ(PKA)によって膜蛋白質がリン酸化された。耳下腺に発現しているアンカリングプロテインのmRNA,蛋白質を調べた結果,AKAP-150サブタイプが検出された。PKAのRII調節サブユニットは基底側膜でAKA-150と複合体を形成して機能していた。AKAP/PKA複合体のマーカーとなる膜結合型PKAのRII調節サブユニットは耳下腺に顕著に存在したが,顎下腺,舌下腺では顕著でないことから,3大唾液腺では耳下腺に特徴的なリン酸化機構と推測される。Na^+-K^+-2Cl^-共輸送体やNa^+-K^+-ATPaseを含む唾液腺のイオン輸送担体の機能を調節するリン酸化に,アンカリングプロテインによって膜に結合したPKAが多大に関与していると考えられた。以上の結果を図書Recent Research Developments in Biochemistry (2003), The New York Academy of Sciences (2003),原著論文Biochemical Pharmacology (2003)に掲載できた。
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