研究概要 |
イオン輸送担体(Na/K/2Cl共輸送体,NKCC1)の機能はN-末端部分の複数のリン酸化部位のうち,^<208>Thrのリン酸化によって調節されている可能性を明らかにしてきた。このリン酸化部分を変異させ,宿主細胞に発現させ,機能の変化を調べるために,NKCC1蛋白質翻訳部分のクローニングに取り組み,トランスフェクトされた可能性のあるE.coliを得ることができた。しかしながら,NKCC1遺伝子の5'部分に非常にCGコンテントの高い部分があり,得られたいずれのプラスミドの配列にも,この部位で20-100塩基程度の欠損が見られた。目的とする3,700bpの遺伝子部分を制限酵素で3,000bpと700bpに切断し,CGコンテントの高い700bp部分を新たにトランスフェクトして得たプラスミド断片を3,000bpの遺伝子に組み込み,野生株となる3,700bpの目的遺伝子を含むプラスミドを作ることができた。野生株プラスミドおよびThr-203,Thr-208,Thr-221にあたる部分をAlaに変異させたプラスミドを作製し,これらのプラスミドをLRクロナーゼ反応によって発現ベクターに挿入し,宿主細胞に組み込む準備を整えた。 通常,簡便な唾液腺癌細胞由来の培養細胞に発現させるが,一般に癌化した培養細胞は由来組織の機能を失っている。本研究の場合,NKCC1がAKAP/PKAとリンクした下流カスケードによってリン酸化されること,さらに,興味深いことはこのリン酸化機構が耳下腺の腺房細胞に固有な機構であることから,正常な耳下腺腺房の機能を持った細胞に導入することが重要である。イオン輸送担体遺伝子を導入する宿主となる唾液腺腺房の培養細胞を樹立するために,耳下腺腺房細胞にSimian virus 40(SV40)の遺伝子導入するベクターを準備検討中である。
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