実験にはハムスター硬口蓋粘膜を使用した。大口蓋神経線維束-口蓋粘膜標本を作製し、口蓋ヒダに圧刺激を与え、遅順応性応答を得た。これは頬袋粘膜の触小体で得られたメルケル細胞-神経終末複合体からの結果と同じであった。しかし口蓋ヒダ粘膜直下にはメルケル細胞が多数分布するため、頬袋粘膜の触小体の様に、神経終末と刺激応答特性とを一致させることが困難であった。 そこでハムスター口蓋ヒダ粘膜のメルケル細胞と神経終末の分布状態を、キナクリン、CK20、PGP9.5による蛍光染色、トルイジンブルー染色および透過型電子顕微鏡を用いて観察した。観察した口蓋ヒダは中切歯と第1大臼歯の間の口蓋ヒダで、前方から第1、2、3、4条の口蓋ヒダを対象とした。 結果1)メルケル細胞は粘膜基底部に限局して存在した。2)基底細胞中におけるメルケル細胞の出現頻度は第2、1、3、4条の順で増大し、第4条の出現頻度は24.8%であった。3)口蓋ヒダを頂部(上部)の基底細胞部と底部(下部)の基底細胞部とに二分し、その分布状態について観察した。いずれの口蓋ヒダも上部に多数メルケル細胞を観察でき、第4条の上部は40.4%であるのに対し、下部は16.3%であった。口蓋ヒダの上部は上皮稜がよく発達しているため、メルケル細胞の出現頻度が高いものと考えられた。4)共焦点レーザー顕微鏡による観察で、多数のメルケル細胞近傍に神経要素が観察できた。5)電子顕微鏡観察においてメルケル細胞は神経終末と近接しており、メルケル細胞-神経終末複合体を形成しているものと考えられる。このことからメルケル細胞は機械電気トランスデューサと考えられる。
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