研究概要 |
細胞基質タンパク質の老化変化が骨形成に与える影響については不明な点が多い。当研究室において、ラット骨芽細胞に活性酸素を作用させたFN上で培養し、骨形成に与える影響を検討した結果、活性酸素処理した群は,無処理群に比べて骨結節が著明に減少することを報告した(Mech Ageing Dev,98:113-125,1997、Ann Periodontol,3:350-369,1998)。しかしながら病態過程におけるこれら歯周組織の病態変化あるいは組織再生時に関与する生体成分の役割については不明な点が多く、特に転写因子レベルでの解明は進んでいない。当研究室グループでは、骨芽細胞を活性酸素処理したFN細胞外基質上で骨芽細胞を培養し、骨結節の形成が著明に抑制することを見いだしている。さらにこの現象がどのような遺伝子発現の変化に起因しているかを検索した結果、活性化酸素処理したFNによって骨芽細胞のI型コラーゲン、アルカリホスファターゼ遺伝子のmRNAレベルが低下していることを明らかにしている(Mol Genet Metab,65:31-34.1998)。本研究では、老化の重大な因子である活性酸素で処理したコラーゲンやフィブロネクチン細胞基質の老化モデルを応用して、マウス由来骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞の未分化間葉細胞から骨芽細胞への分化そして骨形成に至るプロセスに与える影響について20,000遺伝子のcDNAマイクロアレイ解析を行う。 現在のところ、歯科医学研究に20,000にものぼる遺伝子発現のトランスクリプトーム解析を応用した研究は報告されていない。歯科医学領域におけるゲノムサイエンス応用した研究は、すでに遺伝子治療の開発を含めた臨床応用が始められている医学分野に比べて立ち遅れている。今、歯科医学領域におけるテーマとして補綴学への応用を取りあげ、顎骨組織の老化に伴う特異遺伝子の探索、そして骨組織再生に貢献する遺伝子の探索は最重要であり、今後の歯科医学に多大な貢献が果たせると考える。
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