研究概要 |
生体の加齢に伴う骨芽細胞の機能変化が骨形成における老化変化に大きく関与していると思われる。そして,骨芽細胞の機能発現や情報伝達等に細胞外基質を介した細胞間相互作用が重要な役割を果たしていることを明らかとなっている。従って,骨組織の代謝変化を骨芽細胞の活性だけで捉えることは不十分であり,密接な関係にある細胞外基質の代謝変化も明らかにする必要がある。細胞外基質成分であるコラーゲンやファイブロネクチンは骨芽細胞の石灰化に重要な役割を果たしていると報告されている。すでに,ラット胎仔頭頂骨由来骨芽細胞をCu-H_2O_2システムより発生させたヒドロキシラジカルで処理したファイブロネクチン上で長期培養し,骨形成に与える影響を検討した結果,活性酸素処理で培養した群は無処理群と比較し,形成された骨結節の数や面積が著明に減少することが明らかとなった。この系は細胞外基質の老化モデルとして十分持ち用いることができるものと思われる。そこで同様の系にてマウス由来骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞を用いて長期培養を行い,経時的にmRNAを回収し,遺伝子レベルでの変化を調べるとともに,カスタムメイドマイクロアレイ分析による新規遺伝子の発現を確認することは,株化骨芽細胞の分化から骨形成に至るプロセスの中で細胞外基質の老化,つまり環境の老化変化が骨芽細胞の活性に遺伝子レベルでどのような命令を下しているかを知ることであり,本研究の結果は義歯床下骨組織の吸収,高齢者に対するインプラント治療などの欠損補綴,あるいは再生医療の分野に大いに貢献できるものと思われる。
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