研究概要 |
<目的>歯周病原菌の一種であるPorphyromonas gingivalis(P.g.)のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、マンガンと鉄の何れの金属でも活性を持ち、含有する金属によってそれに応じた化学的性質を示す特徴がある。本研究は、金属配位近傍のアミノ酸残基の役割を推測し、部位特異的変異酵素を作製して金属選択性に関わる構造を検討する一方、分子進化の理論をin vitroで再現してMn-あるいはFe-特異的SODに変化させた酵素を得ることを最終目的とした。 <方法>既に得られているMnに活性依存性の増したGln 70 Gly、Ala 142 Glnの2残基変異酵素を用いる。SOD遺伝子をDNaseで消化し、断片をそのままPCRに供し、Taqポリメラーゼのエラー率を高めて変異を導入する。さらに遺伝子の上下流の配列を含むプライマーにより再度PCRに供してSOD遺伝子を再構築する。これをSOD欠損大腸菌に入れ、ライブラリーとし、活性酸素を発生させながらスクリーニングしてSOD活性のより高い変異酵素を持った菌を選択する。酵素をグアニジン塩酸で変性しながらキレート剤で金属を除去し、FeあるいはMn酵素に再構成した酵素に対して酵素化学的性質を調べ、野生型酵素と比較する。同様の実験をGly 155 Thr変異酵素を用い、Fe特異性を高めた酵素に進化させる。 <結果>Stemmerらの開発したDNAシャフリング(Proc. Nat. Acad. Sci.94:4504-9,1997)に従い、Gly 70、Gln 142の2残基変異酵素でDirected Evolutionによる定向進化を試みた。現在、シャフリングの条件検討、スクリーニングのためのMn量を増加させた最小培地上で添加するパラコートの量など、細部の条件を検討中である。
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