研究概要 |
本年度は、破骨細胞の形成、増殖および分化を抑制すると報告されているニューロペプチドcalcitonin gene-related peptide(CGRP)のイソプレナリンによる破骨細胞誘導に及ぼす影響について、マウスの骨髄培養系を用いて検討した。イソプレナリンにより形成の促進されたTRAP陽性多核細胞は、骨吸収能を有しており、RANKLの産生を促進し、OPGの産生を減少させた。このイソプレナリン誘導の破骨細胞形成はCGRPやOPGにより有意に抑制された。CGRPはイソプレナリン処理の骨髄細胞においてRANKLおよびOPGに影響を及ぼさなかった。以上の知見より、CGRPがRANKLおよびOPGの産生に影響することなく、RANKLの前駆破骨細胞への作用を阻害して、破骨細胞形成を抑制することを示唆した。次に、神経系に重要な役割を担っている種々の生理活性物質の骨芽細胞および破骨細胞に対する応答を検討したところ、交感神経終末より放出されるATPおよび発痛物質のブラジキニンがサイトカイン産生を促進することを見いだした。SaM-1細胞にはATPおよびブラジキニンの受容体が確認され、ATP受容体としてP2X4,P2X5,P2X6,P2Y2,P2Y5,P2Y6の6種類が、ブラジキンンの受容体としてB1およびB2の2種類が恒常的に発現していた。SaM-1細胞において、ATPおよびブラジキンはIL-6のmRNA発現および蛋白産生を促進た。このサイトカイン産生を指標にこれら生理活性物質の骨芽細胞への応答機構を調査した。その結果、ATPはヒト骨芽細胞におけるP2Y受容体を刺激し、IP3受容体を経由して細胞内Ca2+を動員すること、また、PLC, p38MAPK, ERK1/2を活性化することによりIL-6産生を促進させる可能性を示した。また、ブラジキンンもB2受容体を刺激し、IP3誘導性の細胞内Ca2+およびp38MAPKを介して骨吸収因子のIL-6のみならずPGE2の産生促進を見いだした。ATPはエピネフリンと同様にIL-6産生を促進する作用を有し、また、発痛物質であるブラジキニンにも骨吸収を促進させる可能性を示した。
|