研究概要 |
本研究年度ではまず,歯科用パノラマX線写真による骨粗鬆症自動スクリーニングシステム構築の基礎データを作成するため,292名の閉経後女性の腰椎骨密度及び大腿骨骨密度と,歯科用パノラマX線写真上での視覚的パラメータとの関係について検討し,分析を終了した.結果,パラメータの一つである下顎骨皮質骨下縁皮質骨厚みと腰椎骨密度との単相関係数は0.45(P<0.001),大腿骨骨密度との単相関は0.49 (P<0.001)となった.この関係は,年齢及び体格を統計学的に補正した場合も影響を受けることはなく,年齢及び体格も含めた重回帰分析の説明変数(R^2)は両者とも0.36(P<0.001)となった.ROC解析によるAUROC値は0.72となり,これは世界の骨粗鬆症スクリーニング指標を上回ることが判明した.スクリーニングの観点から,皮質骨厚みを4.8mmとした場合の感度は90%,特異度は33%,正確度70%となり,ほぼ良好な結果を得た.4.8mmより薄い皮質骨をもつ女性が,4.8mmより厚い皮質骨をもつ女性より,低骨密度を有するオッズ比は約3.4であった.一方,皮質骨の形態分類による感度及び特異度は,骨粗鬆症の女性を判別する場合,各々85%,63%となった.これは,世界の如何なる骨粗鬆症スクリーニング指標よりも非常に高かった. 次年度は,以上の結果をニューラルネットワークシステムに導入し,まずシステムを構築する.このシステムにより,約100人と予想される医学部産婦人科からの新患閉経後女性のパノラマX線写真の指標を支援システムにインプットし,prospectiveにどれだけの正確さをもって,骨粗鬆症診断が行えるかを確認する予定である.
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