研究概要 |
本研究では,口腔癌を対象として多分割照射を行い,治療成績の改善を明らかにすると共に晩期有害事象についてその発生頻度・重篤度を明らかにし,その低減の可能性を明らかにすることを目的とした.1990年から2004年までに1日2回照射法で治療された口腔扁平上皮癌症例のうち治療後2年以上経過観察の行われていた症例は92例であった.T1,7例;T2,47例;T3,14例;T4,24例で,N0,70例;N1,10例;N2,12例であった.治療結果は,全例中51例で一次局所制御が得られたが,再発なく経過した症例は38例であった.期間の後半で化学療法を併用する症例を増加させたが,併用例は34例で一次局所制御が得られたのが17例,その後局所再発のなかった症例は12例であった.一方で,化学療法を使用しなかっだ症例は58例で,一次局所制御が得られたのが34例,その後局所再発のなかった症例は26例であった.腫瘍サイズの大きな場合に化学療法を併用する頻度が高いため,併用効果を直接的に示す結果とはならなかった.晩期有害事象については,発生頻度は27例ではあるが,局所制御の得られている場合に生ずる頻度が高いので日常生活に支障をきたす場合が稀ではないのが大きな問題である.重篤なものでは治療後1年以降に特に明らかな原因なく発生する顎骨骨髄炎(日本放射線腫瘍学会第16回学術大会で発表)から,軽度なものでは照射野に含まれた歯が動揺の後脱落を起こすこと(日本放射線腫瘍学会第17回学術大会で発表)などが明らかとなり,従来いわれているように必ずしも有害事象は少なくはないかもしれないことが明らかになりつつある.X線写真等による経時的な観察から有害事象の発生過程を調査しつつあるが,歯の支持組織の活発な細胞回転が治療によって影響を受けることが主たる原因であるようにも思われる.
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