研究概要 |
[目的]ベンゾジアゼピン(BDZ)系薬物が、唾液腺細胞に存在するBDZ受容体を介して、Cl-の流動に影響を及ぼしたり、ムスカリン受容体刺激によるinositol 1,4,5-trisphosphate(IP_3)産生や、細胞内Ca^<2+>の上昇を抑制することなどを明らかにした。そして、これらの抑制がBDZ系薬物による唾液分泌抑制に関与していることを示した。今年度は、耳下腺細胞内Cl-の動態をさらに解析し、IP_3産生酵素であるphospholipase C(PLC)活性に対するCl-の影響を調べた。 [方法]Wistar系雄性ラットから耳下腺を摘出し、酵素処理により腺房細胞を調製した。細胞内Cl-の挙動は、細胞内Cl-測定用蛍光試薬であるMQAEを用い、ARGUS50にて測定した。PLC活性は、[^3H]phosphatidylinositol 4,5-bisphosphateを基質として用い、反応産物である[^3H]IP_3を測定して求めた。 [結果]diazepam(DZP)は、耳下腺細胞内へのCl-流入を促進した。この作用は、BDZ受容体遮断薬によって抑制された。DZPはCl-の細胞外への流出を抑制した。この結果は、^<36>Cl-で得られた結果と一致していた。ラット耳下腺から調製した細胞膜と1%コール酸処理膜可溶性画分のPLC活性は、Cl-(0-150mM)濃度に依存して有意に減少した。 [考察]以上の結果から、BDZ系薬物は耳下腺細胞膜上の受容体を介してCl-の細胞内流入を促進する。しかし、増加したCl-によりPLC活性が抑制され、IP_3量が減少するために細胞内Ca^<2+>量が減少し、Ca^<2+>依存性Cl-チャネルを介したCl-の細胞外への流出が抑制され、それに伴う水の分泌が抑制されると考えられた。
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