研究概要 |
目的:前年度までに我々は,CT画像3次元表示法(3DCT)を用いて顔面骨硬組織の対称性を分析する方法を検討し,顔面の非対称を自覚せず他覚的にも正常(対称)な顔貌を持つ人における顎顔面解剖学構造の平均的な対称性について検討して学会等で発表した。これに続き今回は,顔面非対称の症例における対称度分析および症型分類を試みた。 材料および方法:顔貌および咬合の改善に外科矯正手術を要する顔面(左右)非対称と診断された25症例のCT画像データを材料とした。軸面スライスCT画像上に頭部X線規格写真の計測点が持つ解剖学的意味に基づいた点を印記した。Nasion, Sella,およびBasionで構成される平面を正中矢状基準面,これに直交する平面を前額および軸位基準面と規定し,各計測点から基準平面への距離を計測して対称度(asymmetry index)を計算により求めた。対称度を求めた計測点は,外耳孔(Porion),眼窩下縁(Orbitale),蝶顎裂(Pterygomaxillary fissure),上下第1大臼歯,上下中切歯,下顎頭(Condyle),下顎角(Gonion),筋突起先端,前鼻棘,およびオトガイ正中(Menton)である。計測点の対称度は,正常(顔面対称)群における平均対称度と標準偏差を基に作成したダイアグラム上に症例の対称度をプロットして評価した。すなわち,正常群における平均対称度と標準偏差の和を基準値とし,基準値よりも小さい場合を「対称」,これより大きく基準値の二倍よりも小さな場合を「非対称」,基準値の二倍を越えて大きな場合を「重度非対称」と判定した。 結果:25症例中23例で,何れかの計測点が「重度非対称」を示していた。「重度非対称」を示すことが多かった計測点はMenton(87%),下顎中切歯(74%),下顎第1大臼歯(61%),Gonion(35%)であった。「重度非対称」および「非対称」計測点の分布から,症例を以下の3型に分類することができた。 1:下顎骨体非対称型(13/25) 2:下顎枝非対称型(9/25) 3:上下顎非対称型(3/25)
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