研究概要 |
近年,臨床術式を簡便化した2ステップさらには1ステップの接着システムが数多く使用されており、各種接着システム中には、HEMAが水とモノマーの相溶性向上とモノマーの歯質浸透性向上のために配合されているのが多い。HEMAは象牙質への接着に極めて有効であることから、大部分の接着性セメントに含有されているが、発がん性やアレルギーが報告され欧米でも問題となっている。それに加えて,HEMAは重合後においても長期に使用することにより大部分が溶出することも報告されている。しかし,HEMAがプライマーの主成分として用いられるのは,(1)酸処理により脱灰された象牙質へのレジン成分浸透を促進する,(2)プライマー中に含有されるメタクリレート系のレジン成分と水との相溶性を高める,という2つの大きな機能を有するためである。そこで,本研究では,これらの2点を考慮し実験を進める必要があり,まず,HEMAフリー接着システムには,エッチングとプライミング,ボンディングが独立した従来のタイプではなく,エッチング後に水洗を行わないセルフエッチングシステムや,ハイブリッド層は樹脂の浸透を妨げない程度の厚さである方が望ましいと考えられる。 そこで本年度は、前年度報告した形態学的評価を下に、各種接着モノマーやポリマーを配合したセルフエッチングシステムClearfil Mega Bond(CMB、クラレ)、One up Bond F(OBF、トクヤマ)、HEMAフリーで1STEPセルフエッチングシステム(試作、GC)の3種類において、マイクロテンサイル接着試験を行い、接着強さを比較し、破壊された断面をSEMにて観察した。接着試験において、CMBと試作セルフエッチングシステム(HEMAフリー)には有意差が認められなかったが、OBFと試作では有意差が認められた。そこで、さらにサーモストレスや繰り返し負荷を与えるなど接着耐久性を含め、総合的に考察を加える必要があると思われる。また、現時点において、HEMAフリー接着システムの実用化がが可能であることが示唆された。
|