研究概要 |
レーザー処理象牙質に対するレジンの接着強さを,窩洞形態を変化させて測定し,C-factorが接着強さに及ぼす影響を検討した。また,レーザー処理象牙質における齲蝕検知液の染色性についても検討した。 新鮮抜去牛前歯の歯頸部象牙質に平坦面(#600仕上げ)とクサビ状欠損窩洞を調製し,Er:YAGレーザー(Eewin【○!R】,モリタ,先端出力60mJ/min,10pps)を照射後直ちにレジン修復(Mega Bond/AP-X)を行い,37℃水中に24時間保管した。次いで,ダンベル型試片を調製し微小引張り接着試験により接着性を検討した。 レーザーによる象牙質蒸散によりレジンの接着性は有意に低下し,いわゆる「レーザーエッチング」による接着促進効果は認められなかった。また,平坦面に比しクサビ状欠損窩洞では,レジン修復物の初期接着性は低下し有意差が認められた(p<0.01)。これらのことから,レーザー照射面の構造欠陥や熱変性層は,レジンの接着性に悪影響を及ぼすことが判明し,さらにC-factorの影響が顕著に出現することが明らかとなった。また,齲蝕検知液はレーザー処理健全象牙質を染色することも明らかとなった。 Er:YAGレーザー照射は,レジンの象牙質接着性を阻害することが判明した。レーザー処理象牙質におけるレジンの接着性の評価時には,平坦面のみならずC-factor値の大きい窩洞においても検討する必要があり,さらにサーモストレスや繰り返し負荷を与えるなどの接着耐久性を含め総合的に考察を加える必要性があると考えられた。また,レーザー処理象牙質面に対し安定したレジンの接着を獲得するには,現段階ではこれらの構造欠陥や熱変性層を除去する必要があると思われた。さらに,現時点では,レーザーによる象牙質齲蝕治療のガイドライン確立に先立って,種々の問題を解決しなければならないことが明らかとなった。
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