研究概要 |
1.デュアルキュアー型リン酸カルシウムセメント(CPC)試料の作製:CPCの硬化反応にレジン成分を加えて光硬化機序を付与するため、CPCの練和液として1液性ボンディングシステムであるAQ Bond Plus(ABP)とOne Up Bond F(OUB)を用いて試料を作製した。粉液比は3.0〜3.5とし、練和泥をステンレス金型に充填後、スライドガラスで圧接した。硬化反応は、光照射30Sで照射側のABPは完全に硬化したが、OUBでは未硬化であった。一方非照射側ではABPおよびOUBとも未硬化であったが、湿箱中に2時間保管後は、両試料とも硬化していた。水中保管24時間後の粉末X線分析の結果から、ABP、OUBともハイドロキシアパタイト(HA)への転化がコントロールに比べて低下していたが、OUBに比べてAQPの方がHAへの転化率は高かった。この結果から、ABPのように含水率の高いボンディングシステムをCPCの練和液として用いれば、CPCに光硬化機序を付与できると共にHAへの転化を期待した新しいタイプの歯髄覆髄剤として応用できる事が示唆された。 2.球状第四リン酸カルシウム(TTCP)の合成:球状TTCPの合成に必要な第二リン酸カルシウム(DCPA)とCaCO_3をそれぞれ粉砕(DCPA=0.36μm、CaCO_3=0.38μm)したのち、等モルになるよう混和・攪拌した溶液をスプレードライヤー(35,000rpm)にて噴霧した。次に球状原料粉末を1,500℃で6時間焼成した後、室温中で放冷させた。焼成物のSEM観察から、球状化した粒子が確認され、粉末X線分析の結果から、焼成品はTTCPであることが確認された。しかし、HAやCaOの回折ピークも微量ながら認められた。この結果から、TTCPの球状化には、ピロリン酸の生成の防止などの検討を行わなければならない事が示唆された。
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