研究概要 |
本研究は、リン酸カルシウムの中でもリン酸四カルシウムとリン酸二カルシウムの等モル混合物であるリン酸カルシウムセメント(Calcium Phosphate Cement, CPC)を直接覆髄材として象牙質・歯髄複合体に作用させる場合、CPCが持つ生体親和性や理工学的特性を損なうことなく、できる限り速やかに硬化し、象牙質接着性を有することが必要であると考え、実験に着手した。 まず、CPCに光重合機序を併せ持つデュアルキュアータイプ直接覆髄用CPCの開発を試みた。CPCの硬化を早めるために市販ワンステップ接着システムの一つであるAQ Bond Plus^<【○!R】>ボンディング材(AQP)を練和液として用いることにより、CPCに光硬化機序を付与することができ、硬化時間を著しく短縮することが出来た。しかし、硬化初期の機械的強さやハイドロキシアパタイト(HA)への転化が、通常のCPCと比べて低下していた。今後は、HAへの転化を妨げないようにするため、重合開始材の種類やモノマーと含水量の検討が必要であることが示唆された。 次に各種コンポジットレジン接着システムとCPCの接着強さについて検討を行った。その結果、リン酸エステル系接着性モノマーを使用した場合、カルボン酸系接着性モノマーに比較して有意に高い接着強さが得られた。これは無機成分に対する脱灰能がリン酸エステル系モノマーの方がより強いため、CPCを脱灰しながら深部まで到達して重合した結果、接着面積が増加したためと考えられた。この結果を踏まえてリン酸カルシウム系セメントの機械的物性、硬化物の組成および接着材との化学的反応の違いなどについて、さらなる検討が必要で考えられた。 以上から、AQPを用いることによって、デュアルキュアータイプCPC直接覆髄材を作製し、レジンとの接着性やその基礎的な特性について理解ができ、臨床使用に向けての可能性が示唆された。
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